技術をかじる猫

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漫画 バビロン大富豪の教え

書籍

読んだのは「バビロン大富豪の教え」。原書は英語で、日本語訳も当然ある。
漫画で読みやすくなっていて、設定がそこそこ現代日本風にアレンジはされている。

原書は「バビロンいちの大金持ち(The Richest Man In Babyron)」

目次

レビュー

主人公は借金が理由で妻子に逃げられ、失意で何もする気が起きない元考古学者。
彼の友人が、仕事の一環で古代バビロニアの石版を発見し、主人公に解析の依頼を行う。

石版は遠い昔古代バビロニア時代の自伝で、貧民から富豪に成り上がった人物のものだった。
彼の生涯の記録を通し、金に愛され、増やすための考え方、行動を学び、現代社会においても借金を返しきり、妻子を取り戻す。

という話である。
非常に興味深い点は

  1. 100年前の小説にも関わらず、ほぼ現代日本でも通じるお金の基礎が書かれていること
  2. 漫画化にあたり、非常に読みやすく、説教臭く無いため、スラスラ読めること
  3. 本気でこれをやるだけで、本当に貯蓄できること(というか同じ論理で貯蓄している)

決して FIRE を目指すというわけではない。
しかし、これを読んで行動を起こすことは決して無駄では無いと思う。

これと「お金の大学」(こちらは具体的なアクションの方法を載せてくれている)と合わせれば、小金持ちは十分狙える良書だと考えます。

各章概要

なぜ、同じように働いているのに、貧乏人と大金持ちがいるのか?

石版の主(≒バンシルくん)が子供の頃の話、貧民の少年であるバンシルくんが、当時大富豪であった男、アルカドから話を聞く。
曰く「金貨10枚あったとしてどう使う?」これを消費に使うようでは富豪にはなれないと

"お金持ち" というのは「お金の増やし方を知っている者」人々は彼らをお金もちだと言っているのだ。 まずはじめにしなければならないことがある「収入の十分の一を貯金することだ」 それだけでは十分ではないが、はじめの扉を開かないものに次の扉は見えない

学び

ちなみに、月収 30 万(手取りじゃないよ!)、年収換算 360 万と仮定して、税金計算をすると、手取り年収は 237 万。
12 ヶ月で割ると、毎月 197,500 円ですね。
3 万引いても 16 万。この月収で家賃を考えれば大体 6 万ですかね?生活費は月 10 万。地域次第ですが、それなりに節約すれば生活できなくないレベルです。

https://www.zeikin5.com/calc/

では、この 3 万貯金を続けると年 36 万、全く年収が上がらなかったと仮定しても、60 歳で 1440 万貯まる計算。
FIRE には程遠いですが、厚生年金と合わせればなんとか生活出来そうなレベルの貯金ですね。

大富豪だけが知っている「黄金に愛される7つ道具」

半年間 1/10 貯金を半年行い、次の学びを教わりに行くという話。

  • なぜ働いても資産が貯められないのか?人間は欲望には際限なくお金を使うからだ。
    収入の 1/10 で貯蓄し、9/10 でできないことは諦めろ
  • 貯蓄した後の生活費を見れば、そこで始めて人は使い方を考える。なので本当に必要なものを考えろ。
    欲望に優先順位をつけよ
  • お金を持っていることは財産ではない、「定期的に金が入ってくる仕組み」が本当の財産だ
    貯めた金を働かせよ
  • 金があるからと、安易に儲け話に乗るな。その道に長けた人に相談してアドバイスをもらえ。
    危険や天敵から金を堅守せよ
  • 住居は幸せな生活と密接に紐づく。モチベーションのための住居は投資といえる。
    より良きところへ住め
  • 皆不安を持って生きている。ならば。
    今日から未来に備えよ

そして何より重要な最後の道具

  • 勝利の女神は常に「行動した人間」にしか微笑まない
    自分こそを最大の資本にせよ

学び

「今日が人生で一番若い日です!」
とはリベラルアーツ大学の言。至言ですね。

ちなみに、日本人初の経済的自立と、富豪の地位に登った本田静六氏(明治初期の人)は、著書の「私の資産告白」の中で、給与の 1/4 を貯蓄と投資に回した。
この手順により、およそ 20 年で資産収入だけで生活出来る水準に到達している。

給与に手を付ける前にそれを貯金・貯蓄に回すスキームは、不変であるとわかる。

価値があるのは、金貨が入った袋か?知恵が詰まった袋か?

「金貨 10 枚の袋と、空の袋を持ち、両方の袋を金貨で満たすまで帰ってきてはならない」
そんな課題をアルカドに言い渡されたバンシルくん。だが、開始早々に競馬の儲け話を囁かれ、早々に資産の半分をだまし取られてしまう。
残りの半分すら、「同じ被害者だ」と言い寄ってきた人物とよくわからない商売を始め、使い込まれてしまう。
そんなとき、「知恵の袋」と渡された袋を開くと1枚の石版が――――

  1. 家族と自分の将来のために収入の 1/10 以上を蓄える者の元には、黄金は自らを膨らませながら、喜んでやってくるだろう
  2. 黄金に稼げる勤め先を見つけてやり、持ち主が群れを膨大に増やす羊飼いのように賢明なら、黄金は賢明に働くだろう
  3. 黄金の扱いに秀でた者の助言に熱心に耳をかたむける持ち主からは、黄金が離れることはない
  4. 自分が理解していない商い、または、黄金の防衛に秀でたものが否定する商いに投資をしてしまう持ち主からは黄金が離れていく
  5. 非現実的な利益を出そうとしたり、謀略家の甘言に乗ったり、己の未熟な経験を盲信する者からは黄金が逃げることになる

学び

平たく言うと、こんなところ。

  • 自分がよく理解している分野で、専門家がNOと言わない投資先に投資する。ちゃんと詳しい人の話を聞きながら考えろ。
  • 大きく素早く稼ぐ方法はない、ギャンブルや甘言に乗るんじゃない、必ず第三の専門家にそのことを相談して動け。

主に資産防衛に関する内容ですね。

賢者の助言によって、貯金が賢明に働き出す

完全に物語の章。

前章の内容を正しく守り、ゼロから労働で貯金し、正しく投資を行い、正しく
「金貨 10 枚の袋と、空の袋を持ち、両方の袋を金貨で満たす」を達成したバンシルくん。

知恵を持ち、その通りに行動すれば誰だって金持ちになれる

師匠に認められ、同士としてバビロンを支えてくれと言われる。

「守るべきもの」があるから人は何度でも立ち上がれる

バビロニアの資産を奪う目的で蛮族が襲来。襲撃の最中、バンシルくんを守ってアルカドが死んでしまう。
彼の最後の教えは

人は自分を守ってくれるものを慈しみ、応援する。 想像してみるといい、頼れる「友人」愛する「恋人」信頼のおける「家族」のために銀貨一枚を惜しむものなどいないことを。 何か一つ「守りたいもの」を持て、それこそが自分を成長させてくれる礎となる。 礎は、一段また一段と大きく強固になる。 そうすれば、人は何度でも戦える。

学び

個人的には耳の痛い話…(汗 まぁ独り身なもので…まぁ親友と実家と趣味には金使うさw それを継続出来る位は維持したいところですね。

己の心は「奴隷」のものか、「自由民」のものか

完全に物語の章。

眼の前で心の師匠が死んだバンシルくん。両親も蛮族の襲撃時に死んでいた。
失意の中無気力になった主人公は、金貸しのもとに「もう奴隷でもなんでもいい」と吐露する。
だがその金貸しは「元奴隷」で、奴隷がどんなものなのか、その経緯を話し出す。

宦官にされかけ、どうにか無事に女性の主人に仕えることができ、「今は奴隷の身分に甘んじている」とぼやくも

奴隷になってしまったから甘んじてるのではなくて、甘んじているから奴隷になったのではないですか?

これを聞いた男は奴隷の立場で言われた事だけ唯々諾々と続けて良いのか?と疑問を持ち、自らの意志で働く事を選ぶ。
そしてこの女主人、最後には彼をわざと逃がすのである。

彼はこの件に恩を感じ、彼女の「自由人であれ」との言葉の元、それを実現するためにのし上がったという。
そんな彼は言う

お前は今日まで水だけを飲んで生きてきたのか?
その体に育ててくれた親に、その知恵を授けてくれた師に、「恩」は返せたのか?

これを聞き、バンシルくんは立ち上がる。

学び

学びとしては「ボーっと生きてんじゃねぇよ!」(チコちゃん)って事でOKですかね。
もしくは「主体的行動あるのみだな」(ターニャ・フォン・デグレチャフ)あたりですかね。

はるか昔の借金返済記録が現代人を救う

完全に物語の章。

自由人としての意志を復活させたバンシルくん。
彼はその意志で借金を返し、見事に復活を遂げる。
労働で元本を築き、貯蓄し、返済した頃には青年となっていく。

そして、師匠の約束を守り、バビロニアの反映を目指す。
それが彼の師匠、両親への恩返しと定めた。
彼は官僚にのし上がり、王妃と結婚まですることになる。

そしてその石板を解析していた主人公も、この粘土板に学び、これが現代でも通じるのでは無いかと考え始める。

学び

昨今では「より良きところへ住め」だけは微妙になりつつある。
この教えは、漫画版だと端折っているところもあるが、これは「高級街にはその質に合うだけの人が住み、そこで人脈を作れることは金の源泉になる」という意味合いもある。
これはリモートワークやコミュニティがネットワークに移動しつつある現代では意味合いが薄くはなっている。

なぜ人は働くのか。それは金のためではなかった

国の重役となったバンシル氏。そしてその妻の弟、要するに王子は、奴隷をコキ使ういけ好かない子供に育っていた。
しかしバンシル氏は変わらず、奴隷とだろうとともに働く姿勢を崩さなかった。
働かなくても何でもあるはずのバンシル氏に彼は質問を投げかける。

「金さえあれば働く必要無いですよね?バンシルさんは既にお金があるのに何故働くのか?」

刃物一つ研ぐときも、何を切るのか?どう使うのか?を想像しながらやる。 するとどういうわけか、その刃物は売れ始める。  お客さんのニーズを満たすものは、お客さんにとって質の良いものになる。 お客さんがその事に対する「感謝」が「お金」というものに形を変えているだけだ。 人に感謝されるように賢明に仕事をする。 それが一番大切で、それさえ続けていれば必ず光は差す その光はお金だけでなく、心も満たす。だから金持ちになっても仕事を続けるのだ

学び

ビジネスの本質ですね。感謝しないクライアントは金払いが悪いし、そんな相手は円を切られてしまう。
逆に良いお客さんは、顧客満足度が高ければ、金も落とすしリピーターになってくれる。

その為には客が何を望み、客に何をすれば喜んでもらえるのかを考え続けることが、ひいては仕事での成功者への道であるとも言える。

エピローグ:最後の黄金法則

石板の解析を終えた主人公、彼は、石版の教えに従い、全ての借金を返済、教授職にまでのし上がる。
そして彼に取っての黄金法則 「家族と過ごす時間こそ黄金である」 という彼自身の人生哲学に行き着く。

彼は全てを精算し、再度別れた妻子に復縁を願い出た。

口説き文句は書籍を買って読んでほしいw