技術をかじる猫

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ユダヤの教え タルムード 説話集

書籍

レビュー

子供に聞かせる「昔話」には教育的側面、知恵などが含まれる。
例えば日本昔ばなしのそれは大抵が「勧善懲悪」「良いことは帰ってくる」「悪いことはいつかしっぺ返しが来る」「ズルはしてはならない」といった話が非常に多い。
これは悪いとは言わないし、むしろ被災しようが整然と並ぶ規範意識や、世界有数の犯罪率の低さにも影響が無いとは言うまい。
子供に宗教に寄らない善悪を徹底する効果が確かにあるといえる。

この「昔話」だが、やはり民族の差が出てくるようだ。
と言うのは世界で最も富豪やノーベル賞受賞者を作り出したユダヤ人。その彼らの「昔話」、タルムードはまた毛色が違う。
感想としては「こんなん幼少期から聞かされて考え続けたらそりゃ成功者になるわ」です。

この話には、「リスクの取り方」「備えることの重要性」「議論することの重要性」社会で成功するためのノウハウが詰まっているのだ。
しかも面白いのは、この説話の最中、親は途中で話を止めて子供に「どうすればいいと思う?」「どうすべきだと思う?」はたまた「この先どうなると思う?」と考えさせると言う。
そうして「考える」習慣も身に着けさせるのだという…

そりゃ大人になったときに差がつくわけだわ(汗

教えの一覧

これもタルムードの一部でしか無いとのこと。

  • 魔法のザクロ
    • ノーペイン・ノーゲイン。何かを得たいなら、最初に自ら痛みを負え。
  • 七匹の太った牛と七匹の痩せた牛
    • 備えられるときは備えよ、豊かさの次は必ず大貧困はやってくる。
  • ナポレオンとニシンの話
    • 小さな設けに止め、それを繰り返せ。
  • 金の冠をかぶった雀
    • 財を見せびらかすと身を滅ぼす。
  • デポラの戦い
    • 権力者相手でも議論をためらってはならない。たとえそれが神であろうと。
  • 手と足と目と口
    • 口は最大の武器である、プレゼン力が無ければあらゆる成果が無に帰す。
  • 狐とぶどう畑
    • リスクコントロールは常に考えよ、行動を起こす前にリスク・コントロールは行なえ、最小リスクの最小成果を基本とする
  • 用心しすぎたアラブの商人
    • 適正な「用心」を心がけなければ、余計なリスクを背負う
  • 難破船の三人の乗客
    • 適切なリスクの取り方を考えよ
  • 二人の乞食
    • 人とお金を動かす「仕組み」を考えよ
  • あるラバイの最悪で最良の災難
    • 最悪の事態は、もっと悪い事態を回避するチャンスかも知れない。パニックを起こすな。
  • 道に迷ったお姫様
    • 多くの失敗から学べ、悪いときの経験が成功を導く
  • 追い詰められたユダヤ人の奇策
    • 命を諦めるな、「滅びの美学」など知った事か
  • パラダイスを見つけた男
    • 幸せは単調な「今」の中にある
  • 母鳥と三匹の雛
    • 教育とは「教育することを教育する」ことだ。それは、自分が教わったことを語り継ぐ、教え継ぐということ。
  • 10個のクッキーの与え方
    • 子供への苦労の教え方。人生は良いことばかりではない。
  • 鶏の卵の運び方
    • 子供に教えるリスク分散
  • 愚かな農夫
    • 子供の個性を大事にする。横並び教育の問題点の示唆。
  • メロディーを買った青年
    • 「形のない」ものに目を向ける。知的価値は物的価値にまさる。(工業製品遍重し、IT技術を軽視した日本の結果…それが失われた 20 年)
  • 村人の三つの願い
    • 助け合い、寄付の精神(日本にはなかなかないよね…)

ここではココの説話の話はしない。
だが、話の教訓を見れば解ると思うが、どれもこれも日本の社会人に足りてなくて足掻いてる所だというのは見て取れると思う。

  • 人とお金を動かす「仕組み」を考えよ
  • 行動を起こす前にリスク・コントロールは行なえ
  • 適切なリスクを負え
  • ノーペイン・ノーゲイン
  • リスク分散

このあたりは大人でも考えるべき問題だと思う。

特に気になった箇所

適切なリスクを負えに関しては、非常に面白いものでした。

ある時船が嵐に遭って難破した。流れ着いたのは多くのフルーツの実る島だった。 船は修理してから出向することになった。 乗客は 3 人いた。 一人目の客は、取り残されたくなくて船から降りなかった。嵐に遭って空腹だったが、それは我慢した。 二人目の客は、船から見える範囲でだけフルーツをとり、ある程度空腹ではあるものの、船の修理の目処が見えたら船に戻るようだ。 三人目の客は、船の修理が短期間で終わるとも考えにくいと、島の中まで入ってフルーツをたらふく食べた。 結果として 一人目は帰りの航海中に耐えられず餓死した。 二人目は生還を果たすことができた。 三人目はそのまま島に取り残された。

これは割と極端な判断ではあったが、「取り残されるリスク」と「空腹で餓死するリスク」との綱引きの話といえる。
こう極端な状況の話だとそれ程難しくなく二人目の判断ができそうですが、ではパターンが変わるとどうでしょう?

例えば「投資」とかです。
大きく稼げる代わりに借金のリスクがある FX?リスクを追わず貯金する?場合によっては紙切れになる株式?値下がりリスクがありえる投資信託
日本人はとにかくリスクを得るのが嫌いですので、銀行貯金と考えますよね…でもインフレを考えると目減りする*1というリスクは負ってたりします。

因みに、株(特にインデックスETF等)は物価上昇に連動*2して上がるケースが多く、適切な分散ができればリスクも抑え込めます。

こういうリスクの取り方のバランスはやはり考えたい所ですね。

*1:インフレで 3 %とすると、100 万の車が来年は 103 万払わないと買えません。しかし、銀行に 100 万 預けても年利なんて 5-10 円…それがリスクです。

*2:その時の時価で取引されるものなので