ビジネスダッシュボード 設計・実装ガイドブック(3)
概要
これの続き。
3 章を読んでいく
第三章「ダッシュボードの要求定義・要件定義の概要」
ダッシュボード構築における要求定義の概要
こんな事をやっていく。
- ビジネス課題を整理するには「自社・競合・顧客(市場)の状況やビジネス課題」のこれまでの取り組み、計画を整理する必要がある。
整理して課題を洗い、その課題がダッシュボードで解決できるのかを吟味する。 - 要件定義ではダッシュボードで観測、改善する KGI*1 / KPT*2 を決める。
これが決まると、施策の改善効果等が可視化できる道筋が立つ。 - どんなデータをどう可視化すれば、課題に取り組めるのかを整理する。
具体的には、指標を見る切り口(観点)でダッシュボードに取り入れるか整理する。 - 誰が、どんな目的で、どの業務プロセス上でダッシュボードを使うのか、想定ユースケースと、見せ方を整理する。
- どんなデータが必要になるのか考える。
1-2 が要求定義(やりたいこと整理)、3 以降が要件定義(具体的目標)
ダッシュボードの要求定義のプロセス
- ビジネス・業務理解
ビジネス課題は、自社以外にも競合・顧客もあり得るので、業務だけでなくビジネス全体も理解が欲しい。
3C*3/PEST*4/SWOT*5 などを利用して整理する。 KGI*6/KPI*7/CSF*8 整理
こいつらを決定するのに、下記の知識がまず必要。- ビジネスの理解 : 業務や課題以外に、部署や利益構造の理解も必要。
- 対象業務の理解 : 日比野業務でどんな取り組みをしているのかを把握する。(ダッシュボードの活用用途の明確化、現実性のあるアクションの明確化につながる)
因みに、KGI / CSF / KPI の関係は、
- [KGI]売上X億円
- [CSF]新規会員獲得
- [KPI]新規来訪者数Y人
- [KPI]サイト回遊率Z%
- [CSF]年間購入回数の増加
- [KPI]再来訪者数α人
- [CSF]新規会員獲得
等の様な感じ
- ロジックツリー整理
多分、マインドマップ的に要因構造を作ればいいと思う。- Whatツリー : 構造・要素を分解
- Whyツリー : 原因の特定
- Howツリー : 問題解決策の立案
- KPIツリー : KGIとKPIの関係整理
- As-Is/To-Be 確認
この工程の目的は、構築するダッシュボードがカバーするビジネス課題の決定、ダッシュボードの優先順位付けの二点です。
As-Is は現状と目標の状態のギャップを、数値的に表してビジネスを可視化すること。
To-Be は理想とする状態。達成目標ともいえる。
この工程は要求定義以外でも、構築後や、運用中にもやります。まぁ状況が変わればダッシュボードも変えますしね… - 課題の整理
課題の定義、課題の構造化、課題の優先順位付けを行います。
課題の定義は「As-Is/To-Be 確認」でギャップのある個所が分かりますから、これを抽出します。
課題の構造化は、なぜこの課題が発生するのかを深掘りして要因を把握する。6W2H*9等で整理することが多い。 課題の優先順位付けでは「改善によるビジネスインパクトの大きさ」「改善にかかるコスト」「課題の緊急度」で決定する。
因みに、いくつかのケースではダッシュボード作るより、部分的/一時的な分析で十分なケースがあります。
- 改善施策を実行するまでの時間が短いケース
課題が急務だったら、プロジェクトなんてやってる場合じゃねぇ… - カスタマイズが必要とするケース
構築後はテストや運用で改善はするが、頻繁に改修することは想定しない。
個別の分析目的のために指標や切り口(比較軸や期間など)を独自に設定してデータを見たいという場合は、ダッシュボードは不向き
ダッシュボードの要件定義の概要
要求定義で決めた取り組む課題に対して、どう可視化すれば課題に取り組めるのかを整理する。
ざっくり以下の工程
- 想定ユースケースの策定
誰が使うか、何のために使うか、見る頻度はどの位か、どんな情報を知りたいか、その情報を知ってどんなアクションを期待するか これを決定していきます。
ダッシュボードを実際に利用する人とすり合わせをした方がいい内容ですね…。 ダッシュボードの全体構成整理
使う人と用途に合わせてダッシュボードを用意することになる。よくある構成が下記とのこと。- 全体サマリーダッシュボード
- KGI/LPI が可視化されたエグゼクティブサマリー
- テーマ別ダッシュボード
- 各テーマのKPIサマリ
- 各テーマに紐づく主要な分析結果
- 詳細分析ダッシュボード
- 各施策やサービス利用者の詳細分析結果
関係性としては、ツリーの様な構成
ツリー状にダッシュボードを構成すると、全体をつかむ→分析→詳細 の様なストーリーが自然とできて扱いやすいそうな。
- 全体サマリーダッシュボード
- ダッシュボードの構成要素整理
ダッシュボードの要素は大きく3つ- KGI/KPI 項目 : KGIなら売上や顧客数、KPIは施策の成果数や購買ファネルなどで分類した顧客数など
- 属性項目 : 顧客の属性データ等、性別/年齢/家族構成/ライフスタイル/趣味など。顧客理解のために利用します。
- 行動項目 : 購買データやWeb閲覧データなどのトランザクションデータや施策指標。
見るべき指標と分析の切り口整理もここ。
- 時系列でトレンドの変化を可視化する
- 顧客属性を掛け合わせ、要素分析して課題の要因を把握する
- KPI を更に詳細な指標で因数分解して、KPIの課題を発見する
- 利用データの整理
要求・要件を満たすデータが揃っているかの調査。
データソースとして問題内科の検証も行う。
所感
要件定義なんて製品開発と変わらんやろ…と思いきや、色々違ってて面白い。
要求定義に関しては、不特定多数に向けて作成する製品よりもより具体的で、特化した理解を求められてるあたりが非常に興味深い。
*1:Key Goal Indicator : 経営目標達成指標
*2:Key Performance Indicator : 重要業績評価指標
*3:事業における自社の戦略を決めるための分析手法。 Customer(市場、顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)の3つの観点から情報を調査・整理して、事業の戦略方針や戦略を実現する施策案を検討していきます。
*4:外部環境を政治、経済、社会、技術の4つの要因に分類し、自社に与える影響を読み解く分析手法。 政治(Politics)、経済(Economy)、社会(Society)、技術(Technology)の4つの頭文字を取ってPEST分析
*5:自社の事業の状況等を、強み(Strengths)、弱み(Weaknesses)、機会(Opportunities)、脅威(Threats)の4つの項目で整理して、分析する方法
*6:Key Goal Indicator : 経営目標達成指標。要するにビジネスゴール
*7:Key Performance Indicator : 重要業績評価指標。KGI までの道筋が機能しているかの指標
*8:Critical Success Factor: 重要成功要因。KGI 達成のための直接要因のこと
*9:Who,Whom, Why,Where,When,How,How match の略