技術をかじる猫

適当に気になった技術や言語、思ったこと考えた事など。

書籍レビュー : 本当の自由を手に入れるお金の大学

レビュー

「これで勝てねば貴様は無能だ」(シャア・アズナブル
をもじって「これで貯蓄できねば貴様は無能だ」と言っていい位、ステップバイステップで貯蓄方法を具体的に教えてくれる一冊。

何がすごいって「始め方~軌道に乗るまで」をステップバイステップで図解で書いてるのですよ?
やる気が無いとか、やる意志が無いとかでもない限り、すぐにでも始められるものが揃ってます。

尚、書籍の各章だと、ページ比率はこんな感じ

  • 貯める力 > 稼ぐ力 > 増やす力 > 守る力 > 使う力

後ろ2つは、方針をもとに自分で考えなければならない部分なので、書ける事がそもそも少ないだけなのかもしれない。

ざっくり各章まとめと見どころポイント

経済的自由になるための基本

労働所得だけでなく資産所得を手に入れよう「金のなる木」と言われてる。
例えば資産所得が月 7 万あれば、家賃が払える!

これを実現するために以下を鍛える

  1. 貯める力 (支出をへらす力)
  2. 稼ぐ力 (収入を増やす力)
  3. 増やす力 (資産を増やす力)
  4. 守る力 (資産を減らさない力)
  5. 使う力 (人生が豊かになることにお金を使う力)

貯める

ステップバイステップで、固定費を削減する方法を、かなり具体的に説明してくれる。

  1. 通信費
    格安SIM に乗り換えよう。
    「キャリアメールが無い」「王手キャリアよりは遅い(よほど重いゲームをDLしない限りは気にならない)」「LINE ID検索できない」を飲めれば -5,000 円ほど!
  2. 電力会社
    電力自由化で申し込めばすぐに変更できる。
    シミュレーションも見て乗り換えよう。-1000 円前後変わる。
  3. 保険
    保険は、低確率で大損害が出る場合のもの。
    本当に必要なのは以下だけ(他が要らない理由も書籍には書かれています)。
    1. 生命保険(扶養家族がいる場合のみ。掛け捨て)
    2. 火災保険(コスパがいい)
    3. 自動車保険
  4. 家 vs 賃貸
    原則的に家の地価が上がる等の見込みの無い限りは、賃貸の方がマネー的には正解。
    ただし気持ちの問題もあるので、そこは自己判断。
    値上がりするかなんてよほど目利きができないと難しい。
    • 買おうとしているマイホームは、売却時に高く売れる?
      • Yes: ローンを組んで買う価値あり。
      • No: 負債を負ってでもマイホームが欲しい?
        • Yes: 心を豊かにする贅沢と割り切って買うべし
        • No: 素直に賃貸へ住もう
  5. 賃貸を安く借りる
    火災保険、保証会社の加入料金、害虫駆除・室内消毒、仲介手数料、鍵交換・ハウスクリーニング、礼金等の契約上のツッコミポイントと、確認内容の説明等。
  6. 引っ越し関連費用
    退去費用のボッタクられないよう注意する箇所、退去費用に火災保険を利用、引越し費用を安くする方法等
  7. 車は買うな!買うなら中古!
    20歳~70歳まで車を所有したときにかかる総額…約 4,000 万円。
    それでも車が必要なら、リセールのいい(購入~売却で差の少ない)車を一括で買うべき。
  8. 自動車保険の見直し
    代理店・対人販売は割高になるので、見直すと年間 1-2 万節約に…。
    車両保険は、使うと保険料がその後上がる…貯蓄で直しても変わらないという見方がある。
  9. 控除制度を使って節税しよう
    基礎控除、扶養控除、配偶者控除配偶者特別控除、障害者控除、寡婦控除(配偶者と離婚/死別した場合)、ひとり親控除、勤労学生控除(働いているが学生身分でもある場合)。
    ふるさと納税(税金の先払い+オマケGET!)、医療控除(年間10万を超える分)。
    使いにくい控除として、生命保険控除、地震保険控除、小規模企業共済等掛金控除(iDeCo控除)、住宅ローン控除。

必読ポイント!
日本は社会保障が驚くほど手厚く、任意保険の意味合いが実は相当薄いことがわかる。
日本の保険は世界一ィィィイイ!

  • 病気・怪我
    国民皆保険」がある。「先進医療・美容整形等・保険対象外医薬品・病院の個室」以外はカバーしてくれる。
    自己負担は3割。自己負担限度額があり、月収50万以下の人であれば、月8.7万を超えた分の医療費は後で払い戻ししてもらえる(高額医療制度)。
    健康保険の保険料は会社と折半(フリーランスは全額自腹)。
  • 障害
    障害の等級によって、「障害年金」がもらえます。
    初診日の証明、厚生年金(or国民年金)に入っていること、障害認定日の時点で障害状態であることの 3 点を満たせば受給可能。
    金額の計算方法も載っています。
    民間の就業不能保険は「国民年金」の自営業・フリーランスは検討の余地があるようです。
  • 死亡
    遺族基礎年金、遺族厚生年金制度が存在し、子供が一人だった場合、8.4万(遺族基礎年金)で、遺族厚生年金は合計で 11.7 万等…。
  • 雇用保険の「失業給付」
    働く意志があり、離職前2年間で12ヶ月以上の被保険者期間があれば受給可能。
    受給額は、「退職前6ヶ月の平均日額×給付率×所定給付日数」で、給付率は賃金日額や年齢で変わるが 45%~80% で計算されます。
    だけじゃない!
    「再就職手当」「育児・介護休業給付金」「教育訓練給付金」なんてものも!
  • 出産
    • 出産育児一時金(健康保険)
      40~42万の一時金の給付。
    • 出産手当金(健康保険・共済組合)
      産前42日+産後56日まで、給料の 2/3 程度の手当が支給。
    • 育児休業給付(雇用保険
      産休開始~180日目まで給料の 67%、181日以降は給与の 50% が「育児休業給付」として支給される。
      保育所に入れない等であれば、2歳まで延長される。

国の使える制度は、知っている人だけが得をする…。
そして 誰も教えてくれない 部分なので、このためだけに本を買う価値があると思うほど。

注意点 2020 年の書籍なので、2023年以降の法改正に関しては記載されていない。
副業の節税に関しての項目で、2023年以降では 300 万円以下の副業は「雑所得」の扱いとなるため、節税のあれこれは利用できなくなるようです…無念。
なお、法人化すれば直接副業にはできますが…

稼ぐ

給与所得で生活基盤を固め、事業所得を増やす。
溜まったお金で「不動産所得」や「配当&利子所得」を手に入れる。

このルートが最も経済的自立(≒FIRE)に近づくとのこと。

なお、給与所得の副業は税金の関連もあり、会社にバレるが、「事業所得」の場合はうまくやればバレない可能性が高いそうな…(いいのかコンナ事書籍に書いて)

必読ポイント!
副業は何から始めればいいのかの解説あり。
家の不要なものを売ってみるところから始めようとのこと。
慣れたらスキル系の副業にチャレンジしていくのが良いとのこと。
また、オススメ副業(& 避けるべき副業)も紹介している。

お金を増やす

生活防衛資金(会社員なら半年分、自営業なら1年分無収入でも生活できる資金)を作ろう。
溜まったら投資開始!ただし、詐欺やゴミ投資先には注意しよう。

全世界株の年間利回りが 5-7% と言われていて、ウォーレン・バフェット(世界最高の投資家)でも年間 22% と言われてる。
これ以上を保証するとかいう商品は詐欺の可能性が高い。

ここでは詐欺や、ゴミ投資先を見分けるコツが記載されている。

  • 元本保証
  • 確実に儲かる
  • ローリスクハイリターン
  • あの芸能人も投資

これらはポンジスキーム(100年以上前の伝説の詐欺師、チャールズ・ポンジが作った手法)と一緒に言われる事の多い文句。
また、私募ファンド(資金を募る対象が狭く限定されているファンド)には絶対投資しないこと。

また、投資商品の種類と特徴、福利の説明を挟み、インデックスファンド*1の紹介とドルコスト平均法*2の説明。
投資講座の種類、NISA/つみたてNISA の説明等。

オススメは日本ではなくアメリカのインデックスファンド。
S&P500 連動のインデックスファンド(eMAXES Slim 米国株式S&P500)とのこと。

また、取り崩し戦略に関しても言及しており、4% ルール*3 なども説明がある。

また、この章では最終的に高配当株(アクティブファンドの一種)や、不動産投資等による、不労所得取得を最終的に勧めている。
ただし、不動産投資は投資形態が非常に多く、考えることも多い。

必読ポイント!
章末にある「○○投資には手を出すな!」の項目。
うん、超怖いです。合法詐欺と言っていいと思う。
というか毎年 1-2 回は来るんですよこの手の声掛けやセールスが…。

新築ワンルームマンション投資

  • 謳い文句とその返答
    • 表面利回り 6.4%
      → 表面てことは、固定資産税とか、ローン金利、各種仲介手数料、共有部分の積立金、登記費用、火災保険、退去時リフォーム代、年々家賃が下がるとか一切合切無視して新築での条件ですよね?
    • 税金対策になります
      → それって赤字が出るってことですよね?
    • 生命保険の代わりになります
      → 死んだらローンはチャラ…だけど何のための物件だ?
    • 将来年金の代わりになります
      → ローン払い終わった 30 年モノの物件が年金とな?
    • 銀行がお金を貸してくれるからお金が無くても大丈夫
      → 銀行の信用情報にはキズがつくけどな!
    • ローンは入居者が払ってくれる
      → 払い終わるまでその家賃ならね
    • 空室対策にサブリース(家賃保証)がついてます
      → 高い家賃を保証してくれるのは最初の数年でしょ?時間経過で不利になります!

お金を守る

資産をなくしてしまうリスクと事例、回避方法の紹介を行う章。
大きく分けて

  • 詐欺・ボッタクリに遭う
    安愚楽牧場の詐欺事件*4で、7万3000人、総額 4,300 億円の被害額。
    そうでなくても「ぼったくりファンド」や「保険商品」がある。例えば外貨建て保険では 2018 年の苦情件数が 2,500 件。金融庁調査では 2018 年 3 月末時点で国内 29 銀行で投資信託を買った客の半数以上が運用損を記録している(※尚 2018 年はアベノミクス真っ只中で、損を出しにくい期間だった)。この原因は同庁調査では無駄に高い手数料だったそうな。
    資産を守るなら、銀行・保険会社・証券会社の窓口(物理)に近づくなということ。(ネット証券の方が圧倒的に手数料は安い)
  • 被災・盗難に遭う
    土地、持ち家、タンス貯金は、災害が起きると一瞬で全財産を失う。
    ネットはネットで、ハッキングで資産を奪われる事例もある。
    キャッシュカード・クレジットカードも不正利用は多い。
    資産は分散して保持しよう。
  • 浪費する
    遺産や宝くじをきっかけに浪費が始まって、破産するなんて話は枚挙に暇がない…。
    簡単に換金できない状態にしてしまおう。
    定期預金でもいいし、インデックスファンドに入れて更に増えると思ったらおいそれと使えまい。
  • インフレで削れる
    インフレとはお金の価値が下がるということ。
    ベネズエラで 2017-2018 に 440,000% のインフレ…4400倍!?44万円が 100 円程度の価値に…((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル
    株価はインフレに合わせて上がるのでリスクヘッジになる。現金資産だけでなく投資信託外国通貨積立なども手。

お金を使う

良いお金の使い方紹介。

  • 寄付・プレゼント
    人間関係を強化するお金の使い方。
    人脈はあるに越したことは無いよね。
  • 豊かな浪費
    自分が本当に好きなことに使う。
    旅行等の思い出つくり。
  • 自己投資
    新しいスキルを身につける。学校に通い直す。
    収入アップだぜ!
  • 時間を買う
    時短家電、家事代行等。
    この時間を思い出に作ったり自己投資したり、稼いだり…。

必読ポイント!
視点を変えてこの章を読むと、悪いお金の使い方が見えてくる。

  • 見栄でお金を使う
  • たいして欲しくないものをなんとなく買う

こうして手に入れた財は、ファイナンスの世界では「地位財」という。
それもよく考えれば良し悪しはある。
例えば社長クラスの人が、『こんな事ができる位に出世してくれ』と後進を発破する目的で生活グレードを高める場合も無いとは言わない。
しかし「自慢のための財」なら 100% 悪いお金の使い方ではないかと思う。

  • 自慢された側との関係は当然悪い
  • ブランドモノ等流行りが廃れた瞬間、たとえどれだけ高いものでもゴミに変わる
  • 本人も思い入れなんてないので、飽きたら意味の無いアイテム

何より 「死ぬ間際に別にどうでもいいものにだけ囲まれて死ぬ」 のと 「仲の良い家族、親友と、もしくはその楽しかった思い出をもって死ぬ」 のはどっちがいいのだろうか?
人生の答え合わせは、最後の瞬間に訪れるものでは無いかと思う。

最後に

「生まれた時に貧しいのはあなたの過ちではないが、死ぬ時に貧しいのはあなたの過ちである。」(ビル・ゲイツ

老後 2000 万問題が叫ばれて久しいが…どんな状況でも、国というシステムが崩壊しない限り、金があればなんとかなる!
いいから貯蓄しようぜ!

*1:投資信託の一種。インデックスと呼ばれる経済指標や指数に連動するよう売買するファンド(投資信託)のこと。

*2:毎月決まった日に決まった金額で投資先に積み立てる方法。直近株価の上がり下がりに影響されず、全体で見れば平均的な購入金額で投資ができる

*3:FIRE 関連では必ず出てくるルール。引退時の総資産の 4% の金額を毎年取り崩す方式と、毎年の総資産の 4% を取り崩す方式の2つがある。

*4:「母牛に出資すれば、毎年生まれる子牛の売却代金で多額のリターンが望める」と言って金を集めた直後破産。